山野善正氏『伝統野菜・在来作物』

  • 2017/5/18
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協会では、医師や専門家による鋭い視点で捉えた、健康と食に関する様々なコラムを掲載しています。今回は、一般社団法人おいしさの科学研究所理事長の山野善正氏に、「伝統野菜・在来作物」について語っていただきました。

山野 善正Yoshimasa Yamano

山野善正一般社団法人おいしさの科学研究所 理事長
滋賀県生まれ。京都大学農学部農芸化学科卒業、農学博士。
東洋製缶東洋鋼鈑綜合研究所研究員を経て、香川大学農学部食品学科講師、助教授、教授。評議員、学生部長、農学部長。退職後2005年より現職。この間、アメリカ、オランダ、オーストラリアの大学で研究。専門は食品物理学。フィルム包装食品の加熱殺菌、食品コロイド、エマルション、テクスチャーについて研究。テクスチャーの研究で、食品科学工学会賞受賞。食品企業、化粧品企業等の顧問、種々の公的委員を歴任。また、民間時代レトルトパウチ第1号“崎陽軒のパック入りシュウマイ”の開発を担当。著編書にコロイド、テクスチャー関連専門書の他に、「おいしさの科学(編著)」(朝倉書店)、「おいしさの科学事典(編著)」(朝倉書店)、「おいしさの科学がよーくわかる本」(秀和システム)、「うどん王国さぬきのおいしさ」(おいしさの科学研究所)等がある。


「伝統野菜・在来作物」

食料問題や食物史の専門家であった安達 巌が執筆した『日本食物文化の起源』(自由国民、1982)によれば、現存する果実や野菜は大抵国外から伝来したようである。たとえば、ナシやモモは中国から、ねぎは中央アジアから、またミョウガは熱帯アジアから弥生時代に伝来した。さらに、柿は中国から、まくわうりはエジプトから古墳時代(4~7世紀)に伝来し、ぶどうはオリエントから、なつめは南ヨーロッパから大和朝時代(7~8世紀)に伝来したという。

京野菜、九条ネギとか金沢野菜、そして練馬大根などというのは外地から伝来した原種を改良して、それぞれ特徴ある野菜に仕立て上げたものなのである。そもそも、わが国の主食であった(?)米にしても、たとえば魚沼のコシヒカリも元をたどれば、弥生(縄文?)時代に伝来した原種から、改良に改良を重ねてできた米である。気象の変化や土壌の質などの変化の影響を受けるので、その品質を維持することは大変である。

ところで、「伝統野菜」に似た用語として「在来作物」というのがある。これについては、山形大学農学部の江頭宏昌が、「ある地域で、世代を超えて栽培者によって種苗の保存が続けられ、特定の用途に供されてきた作物」と定義づけている。伝統野菜とか在来作物のどちらにしても、おいしさに癖があったり、収量が少なかったり、虫や病気に対して弱いなどの欠点を持つことが多く、特定の消費にならざるを得ず、価格も高くなるのは避けられない。いわゆるブランドとして売り出している野菜や作物も同様である。

かく言う筆者の出身地である近江では、ほっそりしたカブの仲間である日野菜、表面に巾着のような筋が入っている杉谷ナス、手の平サイズの坊ちゃんカボチャ(豊郷)などがブランド化されており、一方京野菜の多くは近江で栽培されている。

現住する香川県では、高菜の一種であるまんばは、やや灰汁が強いが茹でておひたしにするか、豆腐と合わせて煮たものが「まんばのけんちゃん」という郷土料理として重宝されている。今では全国一の生産量を誇る、坂出の金時にんじんは、元は京野菜である。

社会のシステムが極端に便利になった時代にあって、伝統野菜とか在来作物をどのように継承していくかは、まさに“文化の形成は「伝統」と「進歩」という相反する概念をいかに止揚するかにかかっている”という問題である。読者はどのように考えられるだろうか。

(大塚薬報No.725より転載)

山野 善正

山野 善正一般社団法人おいしさの科学研究所 理事長

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滋賀県生まれ。京都大学農学部農芸化学科卒業、農学博士。
東洋製缶東洋鋼鈑綜合研究所研究員を経て、香川大学農学部食品学科講師、助教授、教授。評議員、学生部長、農学部長。退職後2005年より現職。

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