山野善正氏『和食とは何ぞや―その考え方―』

  • 2016/5/11
  • 山野善正氏『和食とは何ぞや―その考え方―』 はコメントを受け付けていません。

協会では、医師や専門家による鋭い視点で捉えた、健康と食に関する様々なコラムを掲載しています。今回は、一般社団法人おいしさの科学研究所理事長の山野善正氏に、「和食とは何ぞや―その考え方―」について語っていただきました。

山野 善正Yoshimasa Yamano

山野善正一般社団法人おいしさの科学研究所 理事長
滋賀県生まれ。京都大学農学部農芸化学科卒業、農学博士。
東洋製缶東洋鋼鈑綜合研究所研究員を経て、香川大学農学部食品学科講師、助教授、教授。評議員、学生部長、農学部長。退職後2005年より現職。この間、アメリカ、オランダ、オーストラリアの大学で研究。専門は食品物理学。フィルム包装食品の加熱殺菌、食品コロイド、エマルション、テクスチャーについて研究。テクスチャーの研究で、食品科学工学会賞受賞。食品企業、化粧品企業等の顧問、種々の公的委員を歴任。また、民間時代レトルトパウチ第1号“崎陽軒のパック入りシュウマイ”の開発を担当。著編書にコロイド、テクスチャー関連専門書の他に、「おいしさの科学(編著)」(朝倉書店)、「おいしさの科学事典(編著)」(朝倉書店)、「おいしさの科学がよーくわかる本」(秀和システム)、「うどん王国さぬきのおいしさ」(おいしさの科学研究所)等がある。


「和食とは何ぞや―その考え方―」

和食の2つの考え方を紹介する。

和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたのは周知であるが、果してその中身は何なのだろうか。農林水産省が和食の特徴を整理しているので以下に紹介する。

  1. 多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重
  2. 健康的な食生活を支える栄養バランス
  3. 自然の美しさや季節の移ろいの表現
  4. 正月などの年中行事との密接な関わり

南北に長い風土、その美しい自然を背景にし、また結びついただしや調理法、四季と結びついた行事との関係など、上手く整理していると思う。

ではいったい具体的に、和食とは何だろう。
連載その1の本文で述べたように、野菜などの素材はほとんど外国から移入したものであるが、それらを全部自分のものにしてしまったのである。これこそ和食の真骨頂の原因なのである。カレーライスやラーメンは、日本人からみれば、前者は洋食であり、後者は中華料理に思えるが、外国人からみれば、完全に日本食(和食)なのである。

辻調理師専門学校の辻芳樹校長は、豊富な外国滞在経験を経て、和食はどんどん転換する、言い換えれば成長するものであるといい切っている。そして広がる和食のカテゴリーとして、次のように列挙した。

  1. 和食っぽい素材を活用して和食っぽい見た目の料理。
    たとえばアボカドを酢飯と海苔で巻いたカリフォルニアロール、マヨネーズ付きの寿司がこれにあたる(ギミック和食)。
  2. 和食には見えないが、和食の本質的な技術を活用した料理。
    たとえば昆布だしをベースにしたスープの例が挙げられる(ハイブリッド和食)。
  3. 和食の素材、本質的な魅力を生かしながら、新しい素材や果敢な手法で異文化の中でも堂々と勝負できる料理。
    たとえばこんにゃくのスパゲッティなど(プログレッシブ和食)。

以上、紹介した和食の特徴と変化する和食のとらえ方は正しく、今後和食の輸出促進を考える時、大変参考になることと思う。特に和食の4大だしの素、昆布・しいたけ・鰹節・煮干しはすべて干物であり、だしをとる時料理人は“だしを引く”といっているように、まさに素材のおいしさを引き出しているのである。西洋料理は足し算の料理といわれ、素材の持ち味を複数加えて、全体のおいしさを作ろうとするのである。だしの主成分であるアミノ酸類は、化学的にみると両性電解質であり、緩衝作用によりイオンの解離度が変わると考えられ、これが独特のうま味に通じている。このことから、筆者は、和食はまさに「ゆらぎの食文化」であるといいたい。

(大塚薬報No.715より転載)

山野 善正

山野 善正一般社団法人おいしさの科学研究所 理事長

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滋賀県生まれ。京都大学農学部農芸化学科卒業、農学博士。
東洋製缶東洋鋼鈑綜合研究所研究員を経て、香川大学農学部食品学科講師、助教授、教授。評議員、学生部長、農学部長。退職後2005年より現職。

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