山野善正氏『匂いよもやま話』

  • 2016/9/14
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山野善正氏『匂いよもやま話』

協会では、医師や専門家による鋭い視点で捉えた、健康と食に関する様々なコラムを掲載しています。今回は、一般社団法人おいしさの科学研究所理事長の山野善正氏に、「匂いよもやま話」について語っていただきました。

山野 善正Yoshimasa Yamano

山野善正一般社団法人おいしさの科学研究所 理事長
滋賀県生まれ。京都大学農学部農芸化学科卒業、農学博士。
東洋製缶東洋鋼鈑綜合研究所研究員を経て、香川大学農学部食品学科講師、助教授、教授。評議員、学生部長、農学部長。退職後2005年より現職。この間、アメリカ、オランダ、オーストラリアの大学で研究。専門は食品物理学。フィルム包装食品の加熱殺菌、食品コロイド、エマルション、テクスチャーについて研究。テクスチャーの研究で、食品科学工学会賞受賞。食品企業、化粧品企業等の顧問、種々の公的委員を歴任。また、民間時代レトルトパウチ第1号“崎陽軒のパック入りシュウマイ”の開発を担当。著編書にコロイド、テクスチャー関連専門書の他に、「おいしさの科学(編著)」(朝倉書店)、「おいしさの科学事典(編著)」(朝倉書店)、「おいしさの科学がよーくわかる本」(秀和システム)、「うどん王国さぬきのおいしさ」(おいしさの科学研究所)等がある。


「匂いよもやま話」

初めてヨーロッパを訪れた時に、なんとなく日本では感じたことのない匂いを感じたことは読者も経験されていることと思う。同様に、初めて日本を訪れた欧米人は、いつもと違う匂いを感じることであろう。人により、生臭い魚の匂いを感じるという。

魚といえば、サケの仲間は産卵のため、地磁気センサーにより方向を感知してはるばる海を泳いで、最終的には、生まれ故郷の川の匂いを覚えていて帰って来るといわれている。水中に溶けている何かの成分(アミノ酸という説がある)を人の匂い受容と同じ仕組みで、認知して帰って来るらしい。

それに引き替え、人の嗅覚は、五感の中で最も退化したといわれている。確かに、震災の際に活躍するイヌは人の数万倍の感受性があるらしく、災害時の人の救助や犯人探しに役立っている。妊娠が年中可能な人ではそれほど性ホルモンによる匂いは発散されないが、多くの動物では、発情期に限り、発散される匂い物質が、種族保存に大いに関係しているのは周知のことである。

伝説によると、かの楊貴妃(8世紀)は、麝香の匂いを発散でき、それで唐の玄宗皇帝を魅了したといわれているし、クレオパトラ(紀元前1世紀)は、麝香を含んだ香水を使っていたといわれており、姿や顔だけで男性をひきつけたのではないというわけである。

一方、悪臭では、食品の場合、ニンニク臭(ジアリルスルフィド)、腐敗臭(イソ吉草酸)、酸っぱい匂い(酢酸)などがある。焦げ臭とされるシクロテンは、場合により、良い匂いとも悪い匂いとも扱われる。

嗅覚が最も退化したはずの人間の一員である筆者は、家庭での食品の消費期限の匂い判定機として利用されている。ひょっとして、筆者は原始人間なのであろうか。

(大塚薬報No.718より転載)

山野 善正

山野 善正一般社団法人おいしさの科学研究所 理事長

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滋賀県生まれ。京都大学農学部農芸化学科卒業、農学博士。
東洋製缶東洋鋼鈑綜合研究所研究員を経て、香川大学農学部食品学科講師、助教授、教授。評議員、学生部長、農学部長。退職後2005年より現職。

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