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取材コラム 第26回:天野恵子氏
- 2021/10/22
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「壮絶な更年期体験が開いた「性差医療」の扉」
城西大学薬学部 医療栄養学科教授 和田政裕氏に聞く
性差医療研究・実践の第一人者で、「NPO法人性差医療情報ネットワーク」や「日本性差医学・医療学会」の創設をリードしてきた天野氏。なぜ性差医療を世に問うたのか――そこにはご自身の壮絶な更年期体験があった。ときに、その人の人生までをも左右する性ホルモンの心身への影響を考えるとき、男性の医学、女性の医学という性差医療があってしかるべきと説く。
「私が最初に女性特有の症状に気づいたのは、微小血管狭心症です。更年期前後の女性に多い症状ですが、通常の狭心症に用いるニトロが効かないケースがあり、おや?と思ったんですね」
早速、米国の情報を調べて、これが更年期に起きる女性特有の症状だと知った。が、当時は周囲の男性医師たちの理解を得られず、2001年医学書院より専門書『女性における虚血性心疾患』を上梓した際に、全国の医科大学循環器内科教授に配布した。
これだけなら「女性外来」の構想には至らなかったが、その後、自身の壮絶な更年期体験を経て、女性外来の必要性を確信した。
「ひどい汗、冷え、疲労感、でも検査では何の異常もなく、解決策もない。50歳から9年間にわたって経験した辛い日々でしたが、これが仕事にも大きな影響を及ぼしました。人生を変えてしまうような、こうした辛い経験をしている女性が他にもいるはず。そういう女性たちに解決の道があるのか、研究と発信をしていきたいと」
2002年に性差医療・医学研究会を発足し、性ホルモンの作用が男女の一生に大きな影響を及ぼしていることを、まずは医療従事者に知らしめる活動を始めた。そして、性差医療の実践の場として「女性外来」の設立を訴えたが、幸い、当時の千葉県の堂本知事の理解を得て、10か所ほどの女性外来が誕生した。
「ただ、外来を担当する医師には幅広い知識が必要でしたので、勉強会を行いました。もっとも力を注いだのが漢方ですね。不定愁訴といわれる多様な症状を訴える方が多いのですが、そこに漢方はうまく作用して、ときに驚くほどの効果を発揮するのです」
何か所もドクターショッピングをして、その治療に納得できずにやって来る患者が多いというが、漢方が見事に効いて「10年来の悩みが取れました!」と喜ぶその姿を見るのが、何よりの医者冥利だという。
「これまで現場で培ってきたノウハウを、これからは一般の方々に活用していただけるよう広範囲に発信していきたいと思っています。NPO性差医療情報ネットワークからSNSなどを通じて、情報と知識を広げていきたいですね」
これまで更年期の症状を我慢したり諦めていた女性たちの、人生を変える希望となることを祈ってやまない。
ジャーナリスト 後藤典子