Vol.1『「機能性表示食品制度」について』森下竜一氏

森下竜一氏

「インタビュー:時の人」では、今、最も注目したい人をインタビュー形式でご紹介していきます。
第1回目となる今回は、森下竜一氏に「機能性表示食品制度」についてお話を伺いました。

森下竜一氏

「機能性表示食品制度」について

森下竜一氏

大阪大学大学院医学系研究科臨床遺伝子治療学教授、
日本抗加齢協会副理事長


■アベノミクス第3の矢、成長戦略の一環

後藤:今日は、安倍政権下の有識者会議「規制改革会議」の委員で、同制度の設計に携わってきた森下竜一先生にお話を伺います。
今年の4月から「機能性表示食品」の新制度が始まったわけですが、「特定保健用食品(トクホ)」と「栄養機能食品」に続く第3の食品表示制度ですね。

森下:そうです、今回の規制改革は、43年ぶりの食品表示制度の改正です。これは食品産業の市場拡大をねらった政府の方針でもあるのです。

後藤:サプリメントの市場の拡大には、機能性への理解が必要だということでしょうか。実際、私たちがサプリメントを健康維持や病気の予防のために利用したいと思っても、体にどのような効果があるのか、あまりわからないまま利用してきたような気がします。

森下:基本的に、食品は体への効果を表現できないことになっていますから、たとえば「毎日を健康に過ごしたい方へ」とか「いつまでも元気に歩きたい方へ」など、あいまいなイメージ的表現しか許されなかったわけです。が、今回の改正で、一部に機能性を謳えるものが出てきます。

後藤:6月ごろから、この新制度を利用した食品のCMなどを目にしますね。従来の制度と比べて、何が新しいのですか。

森下:一つは、サプリメントなどの加工品だけでなく、野菜や魚など生鮮食品など、アルコール類以外の食品全般が対象になったことです(注①)。ちなみに日本の農作物が機能性を謳うことで海外輸出が大きく伸びて、地域活性化につながる可能性もあるのです。

二つ目は、国の事前審査がなくても表示できるので、届け出から最短60日で表示可能になり、審査に数年かかることもあったトクホに比べて早い。

三つ目は、体の特定部位を挙げて効能を表示でき、表示できる文言の自由度が高いこと。たとえば栄養機能食品は「ビタミンB12は赤血球の形成を助ける栄養素です」など、表示できる文言が限られていますが、それがない。

後藤:たとえば、どのような表示ができるのですか?

森下:「○○を含み、骨の健康を保つ食品です」とか「○○を含み、正常な血糖値の維持に役立ちます」とか「肌を整えます」など、「体のどの部分の健康に役立つのか」「どの成分がどうやって機能するのか」などが分かりやすく表示されます。

■発売前に公開される科学的データやパッケージ

後藤:なるほど。「糖尿病の人に」とか「〇〇に効く」「〇〇を治す」などのような病気の治療や予防については表示できないけれど、健康の維持や増進の範囲なら、科学的根拠となる資料を提出することで表示可能になるのですね。

森下:そうです、新制度では「安全性」と「機能性」の根拠となる科学的データを、一般消費者にも分かりやすい内容で消費者庁に提出し、公開しなくてはいけません。

後藤:発売前に機能性食品の科学的データを消費者もチェックできる、というところが新しいですね。

森下:実際に、いろいろな消費者団体がこの制度に関して、届け出情報に対する質問をしたり、エビデンスの評価を行っています。従来に比べると、とてもオープンな議論がなされており、これが消費者のヘルスリテラシーの向上につながると思います。

またパッケージが届け出時点で公表されるというのも革新的ですね。消費者に過度な期待を持たせるようなものは出せないわけです。従来は、発売後規制が中心でしたが、消費者の誤認を招かないよう事前にチェックできるという制度設計がいいですね。品質や製造規格も決められており、含有量も効果の無い量では認められないというのもいい方向だと思います。

後藤:これによって、市場の信頼性は高まるということですか。

森下:そうですね、機能性の根拠となる科学的データを提出する義務があるので、ラベル表示の疑わしい食品とは明確な線引きができるということです。また、この表示基準をクリアした生鮮食品が市場に出回るようになれば、生活習慣病の予防や、健康寿命延伸のための食生活管理ができるようになるかもしれません。

後藤:今後、この制度をどう活かすかは、消費者の理解が進むことが重要になるかと思いますが、よりよい健康市場の発展を期待したいところです。今日はありがとうございました。


注①:

  • アルコール飲料やコレステロール、脂質、糖分、ナトリウムなど過剰にとる可能性があるもの、栄養機能食品、特別用途食品は除く。
  • 機能性関与成分が特定できない食品や、ビタミン・ミネラルなどの食品摂取基準で基準量が定められている栄養素は対象外。

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