取材コラム 第8回:川嶋朗氏

「効くメカニズムはわからなくても、効く結果がある」
東京有明医療大学教授 川嶋朗氏に聞く

少年時代に抱いた漠然とした医療への不信。それが医師への道を選択させた動機だったが、やがて自身の病を機に、探り始めた”見えないエネルギー”による医療。その不思議さ、面白さを川嶋氏に伺った。


「僕が最初に気功に興味をもったのは、自分の突発性難聴が治らないとわかったときです」他に何か手立てがあるんじゃないかと思案し、唐突に「気」の見えないエネルギーを学んでみようと決めた。恩師に紹介された気功のセミナーに参加したのち、それを患者に使ってみたら見事に効いたことに、まず自分が驚いたという。しかし、周囲はそれを根拠のない「プラセボ」だとして取り合わなかった。

「でもね、よく考えてみてください。西洋医学が二重盲検法を取り入れているということは、プラセボの存在を肯定しているわけでしょう?プラセボという見えない力の作用を認めているのです」

同様に、エビデンス(科学的根拠)という言葉にもジレンマがあるという。
「たとえば西洋医学では常にエビデンスの有無を問うが、痛み止めがなぜ効くのか、麻酔がなぜ効くのか、抗うつ薬がなぜ3週間服用しないと効かないのか、そうした作用機序は未だわかっていない。にもかかわらず効く。効くという結果があるからエビデンスがあるといえる。エビデンスとは作用機序ではないのです」

ホメオパシーも、フラワーエッセンスも、作用機序がわからないという理由で、エビデンスに欠けると言ってはいけない。臨床試験でポジティブな結果が(もちろんネガティブな結果も)ある以上、エビデンスがないと断言できない。

「たとえばホメオ(=類似の)パシーとは、類似のものによって治す医療のことです。熱があれば、熱を出す作用のあるものを体内に入れることで、自己治癒力を触発しようというもの。現代医学の熱を取り除こうとする治療法(アロパシー)とは、方向が異なります」

また治療には、レメディという砂糖玉を用いるが、不思議なことに、レメディに含まれる物質は検出できないレベルにまで薄められている。そして、薄めれば薄めるほど効力が上がるという。現代の物理学では、とうてい理解できない現象で、その作用機序はわかっていない。「しかし、使ってみると効くという多くの報告があるのです」

はたして、こうした医療を「作用機序のわからない怪しいもの」として否定してよいのか。

「ただし、むやみに信奉する宗教的なものになる危険性もあり、その要素を見極めることが、見えない力を使うことの最も難しいところですね」と、氏は釘を刺した。

医療を受ける私たちが、それをよく知り、理解し、そのうえで自己責任によって選び取る必要があるのだろう。

ジャーナリスト 後藤典子

川嶋氏の取材動画はこちら

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