取材コラム 第18回:若命浩二氏

若命浩二氏

「治療は薬だけではないことを、テキサス大学で学んだ」
北海道科学大学薬学部 准教授 若命浩二氏に聞く

漢方の研究から、人体のバランスのとれた調整機能の重要性を知り、そこからホルモンバランスの研究に進み、さらに米国に渡って免疫の研究を手がけた。「バランス」の世界の魅力を探求して、さまざまな研究室で多くの研究者との交流を経て得てきたもの。それが今、天然物や栄養素の健康効果のメカニズム研究につながっていると言う。現在進行中のユニークな研究テーマの根底に流れる氏のスタンスとは何だろうか。


「アメリカで多くの研究員との交流がありましたが、とくにテキサスにあるMDアンダーソンがんセンターのウェルネスセンターという施設で、がんの治療に統合医療を取り入れていたことに、とても強いインパクトを受けましたね」

獨協医科大学で医学博士を取得して後、米国テキサス州立大学ヒューストン校のヘルスサイエンスセンター医学部外科学に研究員として渡ったのが2006年のこと。その時期に米国ではすでに、がん患者のために健康食品、漢方薬、栄養療法、音楽療法、針灸、マッサージなどを、最先端医療とあわせて、がんの治療に取り入れていたという。

「また近くにはNASAのジョンソンスペースセンターがあり、よく交流していたのですが、宇宙飛行士が無重力状態にいることで免疫のバランスを崩して体調をこわすというのです。それを薬ではなく、栄養素で治すという研究もやっていて、とても興味深かったです」

そもそも北海道薬科大学大学院で薬学を学んだ若命氏が、現在、天然物や栄養素の研究に勤しんでいるのは、ここにルーツがある。

「治療は薬だけではないということを、テキサス大学で学びました。また、外科学に所属していたので経腸栄養剤についても研究していて、術後の栄養補給が回復を早めることや、感染症にかかりにくくすることもわかっています」

そして帰国後、若命氏の選んだ研究テーマは「桑の葉」だった。桑の葉にはデオキシノジリマイシンという昆虫に対する毒性成分があり、他の虫は寄り付かないが、なぜか蚕には抵抗性がある。これに興味を持ち、メタボリックシンドロームマウスを使って研究を行った。そして肝臓内の脂質を代謝促進する遺伝子を発見した。特許を申請し、青汁として製品化している。

他にも、白雪茸の育毛効果や、北海道産サラブレッドの胎盤を利用した皮膚への応用、北海道の貝化石を利用したコスメや建材の開発など、研究対象はどれもユニークだ。

「面白いと思ったら、フィールドにこだわることなく探求します。そこで見つかったものが人々の幸福や健康に役立つなら、研究者として本望です」と、微笑んだ表情に子どものような探求心と自信が垣間見えた。

ジャーナリスト 後藤典子

若命氏の取材動画はこちら

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