取材コラム 第31回:江面浩氏

江面浩氏

「日本市場初のゲノム編集トマトが、世界に与えた影響」
筑波大学 生命環境系教授 江面浩氏に聞く

昨年、ゲノム編集技術を使って品種改良されたトマトが、日本で初めて一般販売されて話題となった。このGABA(ギャバ)が高含有されたトマトは、昨今の健康志向の高まりに呼応して誕生した。これまでのように品種改良に数年をかけていたのでは、市場のニーズを捉えきれなくなっている。新たなゲノム編集技術がもたらしたこの大きな躍進は、私たちにどんなメリットを与えてくれるのだろうか。


「食品規制の厳しい日本で、ゲノム編集をした一般の農産物が市場に出て、消費者に届けられるようになったということで、今、世界中の関心が集まっています」

連日のように、海外の学会やセミナーに招聘されるという。注目されているのは、クリスパー・キャス9というゲノム編集技術を使ったGABA高含有トマトだ。GABAは多くの動植物に含まれるアミノ酸の一種だが、血圧上昇を抑えたり、ストレス軽減の効果があるとされている。

「トマトは、他の作物と比較するとGABA含有量が高い。なぜGABAを蓄えやすいのかを10年にわたり研究してきましたが、グルタミン酸からGABAを生合成する過程に関わるGADという酵素の重要な働きがわかったのです。こうした基礎研究を経て、GADという酵素の遺伝子を編集(チューニング)することで、GADの働きを高め、GABAが通常の4~5倍作られるようなトマトを作ることができたのです」

これまで大ぶりのトマト1個を食さなければ享受できなかったGABAの健康効果を、ミニトマト2個でまかなえるようになった。
では、安全性はどうか。遺伝子組み換え技術がよく問題視されるが、「組み換え」と「編集」ではどう違うのか?

「いつの時代も新しい科学技術には、たいてい何らかの反論や抵抗感が生じるものです。ただ、ゲノム編集はもともと持っている作物の遺伝子の性能を上げたり下げたりする技術で、別の遺伝子を持ってくる(組み換え)わけではないという点で、安全性は高いと考えます」

世界のゲノム編集食品に関する考え方は今、変わり始めているという。

「サスティナブルな社会を作る『欧州グリーンディール計画』では、先端技術を使わないと計画は達成できないという認識で、動いています。また英国は、EUから離れたので、いち早く2021年9月に、ゲノム編集技術をアンロックすると決定し、ゲノム編集小麦の栽培試験を始めましたね」

今回の日本のゲノム編集トマトが、こうした世界の規制改革の非常に大きな力になっているという。ジャパンスタンダードがグローバルスタンダードになる、まさにエポックメイキングな出来事である。

「今後、こうした技術を含めたさまざまな先端技術を活用して、食品の質と量を高めることが必要ではないか。安心して食料が得られて、しかも健康になれる、人生のQOLを上げる、そうした社会に貢献したいと思っています」

ジャーナリスト 後藤典子

江面氏の取材動画はこちら

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