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山野善正氏『私の考える食育』
- 2016/3/9
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協会では、医師や専門家による鋭い視点で捉えた、健康と食に関する様々なコラムを掲載しています。今回は、一般社団法人おいしさの科学研究所理事長の山野善正氏に、「食育」について語っていただきました。
山野 善正Yoshimasa Yamano
一般社団法人おいしさの科学研究所 理事長
滋賀県生まれ。京都大学農学部農芸化学科卒業、農学博士。
東洋製缶東洋鋼鈑綜合研究所研究員を経て、香川大学農学部食品学科講師、助教授、教授。評議員、学生部長、農学部長。退職後2005年より現職。この間、アメリカ、オランダ、オーストラリアの大学で研究。専門は食品物理学。フィルム包装食品の加熱殺菌、食品コロイド、エマルション、テクスチャーについて研究。テクスチャーの研究で、食品科学工学会賞受賞。食品企業、化粧品企業等の顧問、種々の公的委員を歴任。また、民間時代レトルトパウチ第1号“崎陽軒のパック入りシュウマイ”の開発を担当。著編書にコロイド、テクスチャー関連専門書の他に、「おいしさの科学(編著)」(朝倉書店)、「おいしさの科学事典(編著)」(朝倉書店)、「おいしさの科学がよーくわかる本」(秀和システム)、「うどん王国さぬきのおいしさ」(おいしさの科学研究所)等がある。
私の考える食育
―中四国食育推進協議会座長と講座企画の体験から、今また考える―
食育推進が叫ばれ、食育基本法が制定(平成17年6月)されて久しい。その位置づけは、
①生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきもの
②さまざまな経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てること
となっている。
また、その背景として、
①「食」を大切にする心の欠如
②栄養バランスの偏った食事や不規則な食事の増加
③肥満や生活習慣病(がん、糖尿病など)の増加
④過度の痩身志向
⑤「食」の安全上の問題の発生
⑥「食」の海外への依存
⑦伝統ある食文化の喪失
が提示された。これらを踏まえて、種々の講座、関連資格取得セミナーが開催され、また、学校教育の場で実践されてきた。
これらの、基本的な背景や考えはもちろん大切であるが、当時、筆者が考えた基礎的な問題点は以下の通りであった。
- 食と農はつながっている
- 社会構造の激変
- 科学技術の速すぎる進歩(?)
- 社会・文化の変化
- 食情報の氾濫
そこで、以上のすべてを考慮して、平成20年に高松で設けた食育指導者向けの、食育講座(全21回)の内容を紹介したい。
- 食育の背景、食育基本法
- 食と農業の経済学
- 食材の流通
- 食の安全性
- 食品の品質(おいしさ)
- 食品栄養学
- 食品材料各論 4回
- 学校給食 2回
- 調理実習 4回
- 社会生活、家庭生活、消費生活
- 食文化(食の歴史、世界の食)
- 地域の食文化
- 食事のマナー
- 総論、質疑応答
以上の各講座担当には、それぞれ、専門家をあてたことは言うまでもない。この講座の意図するところは、食育は、単なる栄養や健康に直結する内容のみを目指すのではなく、その元にある、産業、流通、文化、マナーまでを含むということである。「いただきます」、「ごちそうさま」を食事の前後に言うのはもちろんのこと、ばっかり食べや、机に肘をついた食べ方をしない、箸をうまく使うなどの作法もきちんと教えて欲しいのである。